九州大学の出向時にビジネスモデルを考えることで実現した仕事の1つをご紹介。
糸島市の健康福祉センターには九州大学の健康介護研究所である九州大学ヘルスケアシステムラボ糸島、通称「ふれあいラボ」があります。
世界最先端の研究から生まれた「歩行アシストスーツ」や心臓マッサージを採点してくれる「しんのすけくん」、バランス計、床擦れ予防マットなど、展示・体験コーナーが盛りだくさんです。
糸島市民は、子どもから高齢者まで、自由に見学、体験ができます。
経緯は、九州大学と住友理工(車の防振ゴムシェア世界一の一部上場企業)の共同研究がもともと開始されており、糸島市は九大との連携協定に基づいた研究のための人や場所の協力でした。
しかし、それだけでは、市の職員も忙しく人手が足りなかったり、市のメリットも感じられない状態です。
そこで、たまたま九大の産学官連携本部に出向していた私に白羽の矢が立ち、何か考えてほしいということになったのです。
ここで、以前のブログに紹介したビジネスモデルの考え方が役に立ちます。
ビジネスモデルは人、モノ、金などをグルグル回す仕組みでしたが、糸島市、九州大学、住友理工の三者でこの仕組みを考えよう、つまり、民間のお金を活用することで税金を使わずに、人やモノのという資産も有効活用。そして、三者がwinwinになる仕組みを考えました。
さらに、ビジネススクールの国際経営では、「現地適応化」という手法を学びます。その国に行けば、文化、社会、政治、経済が違い(「CAGEの隔たり」と言います)、そこに適応するためには、現地に法人を作ったり、そこで雇う人、経営陣を含め、人材を獲得していく手法です。
糸島市は市町村合併、施設の統廃合により、施設の有効活用を考えなければなりませんでした。ここから、九州大学に市の施設に入ってもらい、住友理工の人に九大に出向した形で糸島のラボに常駐してもらうことでした。
つまり、糸島に適応化するために、来てもらったのです。
このことで、まずお金は、もともと必要だった企業の研究費で回り、人は大学と企業で回してもらい、モノ(箱)は糸島市で準備。
すると、研究に必要な情報提供、病院や福祉施設、部品企業などの関連機関と連携などを市がとてもやりやすくなります。
ラボでは体験を通じて測定した結果に基づいたフィードバックがあり、高齢者も楽しく介護予防ができます。子どもたちは、最先端のものづくり、ロボットを見て驚きです。
糸島市にとっては部屋を有効活用でき、費用をかからず、部品や部屋の維持、三人も企業から移住してもらうなど、経済波及効果もあります。また国内の企業に留まらず、海外からの視察もあり、取材も多く知名度向上にも役立っています。
JICAの皆さんも来てくれました。
住友理工も被験者の協力、関係機関でのデモ、社会実装に向けたデータの収集やマーケティングのデータが手に入ります。取材や学会発表などで知名度向上も図れます。
九州大学はもちろん研究が進み、金も、場所も、人も出してもらえることで言うことなしなしです。
これで、糸島市と九州大学、住友理工の三者協定が締結でき、無事、平成28年4月にオープンしました。
皆さんもぜひ一度、糸島の健康・介護の最先端「ふれあいラボ」に、お立ち寄りください!
●詳細はこちら
ふれあいラボホームページ http://www.fureai-labo.jp
次回は、もう1つ産学官連携のビジネスモデル、糸島市、九州大学、富士通の「AI(人工知能)を使った定住・移住マッチングシステム」を考えたときの仕事を紹介できればと思います。
こちらも世界初の取り組みで、全国から取材が殺到している事業になりました。