博士&MBA地方公務員の日々挑戦

(学問上)経営学をマスターした行政マンが、どれだけ地域政策に役立てるか、その実践をゆるくつづります

分析と理論の組み合わせ。道具は使うことが大事!

また分析の事例を紹介したいと思います。また、分析の方法とMBAで取得する数多の理論をどう実務に活かしているかという視点も入れていきます。

これも一気に行くとつらくなるので、じわじわと。

 

まず、下のグラフは糸島市の観光入込客数の推移です(福岡県観光入込客推計調査)。

f:id:okagon:20170129075410p:plain

 

ここにもデータを扱う際に必要な要素があります。ひとつは、少し前にご紹介した「分解する」という方法。これは観光客を「日帰り」と「宿泊」で分解しています。観光客はどちらかに分けられるので、漏れなく、ダブりなくカウントできる分解軸です。

 

すると、糸島市は99%が日帰りということがわかります。観光産業は入込客数より、消費額が大切です。宿泊と日帰りの平均単価は国が公表しているものがいくつかあるので、それをかけると消費額、つまり地域にどれだけお金が落ちているかわかります。

公表の単価(13000円前後)より少ない(ほとんど福岡市からで産直などが多いため)、日帰り8000円/人としても、570万人×8000円=456億円と、少なくても数百億の産業になっています。

 

それから、分析の大事な考え方として「時系列で見る」ということが大切です。

これは調べたい分野の全体像を見る、傾向を見る上で、最初にすべきといって過言ではないデータの扱い方になります。

この場合も、最新年の全体の金額がわかるだけでなく、経年変化を見ることで、成長か、衰退か、現状維持か、打ち手が変わってきます。

糸島市の場合は成長産業なので、「鉄は熱いうちに打て」状態です。この観光シェアの恩恵にあずかる地域の事業所は、数百億のうち自店が持っているシェアの分だけ、全年度の伸び率分、自然に売り上げがアップしていることになります。しかし、それで、あぐらをかかないよう、もっと伸ばすため、お客様を飽きさせないため、打ち止めになったときの新しい市場を開拓するための投資を行う必要がある、つまり、そのような戦略を考えている状態です。時系列で見るだけでも、かなりの分析ができます。

 

次に、もう一度分解する軸を変えてみます。

今度は観光客の「目的別」の入込客割合を見てみます。

f:id:okagon:20170129075442p:plain

すると、産地直販施設(産直)が半分近くも占めていることがわかります。

伊都菜彩というJA直営の日本一売り上げが多い施設があることに加え、19もの産直が市内に点在しています。

f:id:okagon:20170129075651p:plain

 

さらに、分解という軸+理論を使います。分ける軸に理論を持ち込みます。

観光の魅力については、デービット・アトキンソンさんの「新・観光立国論」で、観光の魅力要素は「食、文化、自然、気候」の4つに分けられます。この要素の多様性が多いほど、宿泊客が多く、インバウンド(海外客)が多くなり、観光地としての価値が高くなることが示されています。

 

糸島市の例を、この理論に当てはめて分類すると、下表のようになります。

食は、約60%を占め、文化は約15%。自然は約5%となり、気候は釣り、キャンプ、カキなど他の食、自然、文化などの要素と組み合わさっています。

糸島市の観光は、多くの部分を「食」という資源で補っていることがわかり、理論どおり、多様性が低いと日帰りが多いという状況です。 

f:id:okagon:20170129075500p:plain

 

しかし、一方で「食」に強みがあるといえます。

f:id:okagon:20170129083154p:plain

 f:id:okagon:20170129075730p:plain

その産直もまだまだ伸び、福岡ではブランド化している糸島カキは、前年比44%の伸びです。

 

このように、ただ闇雲にデータを扱うのではなく、理論と組み合わせて分析すると次の戦略もわかりやすく、理論は数あるデータで証明されているため、成功確率をあげることができます。そもそも、この理論を知って、使って打っている戦略がどうかで、他人への説得力も違うし、自分が事業を実行するときの自信につながります。

 

データをこの理論と組み合わせたことで、「食の強みを伸ばしていこう」、「食と組み合わせる多様性を増やすため、工房やゴルフを伸ばす戦略を打とう」ということを次に考え出すことができます。

 

工房の体験観光はカキ小屋の3分の1程度の観光客ですが、伸び率はカキ小屋と同程度です。私は130件以上も立地する工房分野に投資していくことが将来の糸島市の稼ぐ力を高めることにつながると考えています。

 

理論やツールばかり、役に立たないということではないと思います。いかに自分が実践で使えるようになるかが大事です。

事業構想大学院大学の大社先生に言われた言葉は、「人間は熊やライオンなどの動物に勝てないが、道具を持つと勝てる。人間は道具を持つと強くなれる」ということがまさに仕事でもあてはまると感じます。

 

ふぅ~、まじめな投稿は結構体力使いますね。

やっぱり、遊びに投稿も入れたゆるいブログにして、ぼちぼちいくのが長続きするかな~。

 

それといつも残念なのが、自分の係に後輩が来れば、実践で自分のスキルを見て、学んでもらって、別の部署でもどんどん活躍してほしい!と思っているのですが、15年間のうち新規採用職員が半年いただけで、いつも後輩がいない部署。。。(泣)